【悠々往来 ローカル線の魅力】スイッチバック駅2つ JR肥薩線(産経新聞)

 ■標高差430メートルの急勾配のどかに

 スイッチバック駅が人気だ。急勾配をのぼるため、かつては山間部を走るローカル線に数多くあったが、今は列車の馬力も大きくなって数少ない。そんな中、JR肥薩線には今も2カ所に残り、そのうち一つはループ線の中にスイッチバック駅があり今や観光名所。今年、開通101年目の新たなスタートを迎えたJR肥薩線。雄大な自然の中を、列車が悠々と走っていた。(文・写真 小畑三秋)

 ループ線にスイッチバック駅を備える大畑(おこば)駅(熊本県人吉市)。無人駅なのに、構内の枯れ葉を集めて燃やしているお年寄りがいた。

 JRから名誉駅長に委嘱されている地元の池田幸男さん(68)。「のどかな雰囲気が好きで、8年前から駅の世話をさせてもらってるんです」という。

 この駅に停車する列車は1日わずか5往復。「一日中ここにいても、地元の人の利用はせいぜい5人ぐらい」だとか。ほかは観光客だ。「なぜこんな山奥の駅に全国から訪ねてくるんだろうと思っていたけど、スイッチバックが目当てだったんですね」と笑った。

 スイッチバックは、この大畑駅と肥薩線で最も高所にある矢岳駅(標高537メートル)を挟んだ宮崎県側の真幸(まさき)駅にもある。列車はいったん停止してバックし、再び方向を変えて坂を上る。進行方向を変えるたび、運転手が忙しそうに車両を移動していた。

 矢岳駅から約20キロ離れた人吉駅(標高107メートル)まで標高差が430メートルもあるためにこんな仕組みが欠かせないのだ。

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 「弁当え〜、弁当お〜」。肥薩線の中核駅・人吉駅で降りると、懐かしい声が聞こえてきた。

 「弁当売って41年ですたいね」。菖蒲豊實さん(66)は、弁当の入ったケースを提げてホームを行き来していた。お勧めは栗めし。栗が丸ごと入ったご飯に、卵焼きや千切り大根など。素朴な味わいだ。

 「SLば走りよった時分は、一列車で50個ばかり積んでほとんど売れましたけん」と話す。「今は弁当より、(私との)記念撮影の方が多かです」。時代の移り変わりを照れくさそうに話してくれた。

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 歴史の古い肥薩線沿線には、明治から戦時中にかけての建造物や産業遺構などが数多く残されている。

 第二次大戦の傷跡が残っているのは明治36年建造の大隅横川駅(鹿児島県霧島市)だ。ホームの柱に直径2〜3センチの穴が2カ所貫通し、「機銃掃射の跡」との表示があった。駅舎内には、平和への思いを投稿してもらう箱も置かれていた。

 一方、駅舎正面では地元の人たち手作りのジャンボ門松が乗降客を出迎えていた。穏やかに正月を迎えることができるのは、やはり平和のおかげだと感じた。

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【用語解説】肥薩線

 八代−隼人間の総延長124.2キロ。明治42年11月21日に人吉−吉松間が開通して、当初は鹿児島本線としてスタートした。昭和2年に肥薩線に改称。明治36年築の嘉例川駅と大隅横川駅は木造瓦ぶきの姿をとどめ、国登録有形文化財。昨年は開通百周年記念のシンポジウムや駅前コンサートなどを開催。4〜11月に「SL人吉」(8620形)が熊本−人吉間で運行された。今春も観光シーズンなどに運行予定。

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